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  • 税理士から「決算をまたぐ工事ってありませんか?」と問われるのは何故?

    仕掛品は、税務調査のチェックポイント

    建設業の税務調査で、100%チェックされる重要ポイントの1つが、「仕掛品(しかかりひん)」です。正しい処理ができていないことで、追徴課税を受ける可能性がとても高い項目です。

    特に請負金額が大きい工事、複数の外注先に依頼する工事については、売上と経費の対応関係を確認する作業(紐づけ)に時間がかかります。工事現場に携わることの多い社長だと面倒くさい事務作業ではあります。ただ、これは必ずチェックしなければいけません。繰り返しますが、税務調査で100%論点に上がります。

    スタートして間もない建設業の社長は、決算時に税理士から「決算をまたぐ工事ってありませんか?」と問われると、なぜそんな面倒なことを聞くの?、それって意味あることなの?と思われるでしょうが、ここは建設業では特に大きなポイントなのです。

     

    仕掛品(未成工事支出金・仕掛工事)とは

    仕掛品というと難しい用語に聞こえますが、要するに、「工事が途中のもの」です。建設業の経理においては未成工事支出金や仕掛工事という勘定科目で語られることも多いですが、「やりかけのもの」ということで、製造業や建設業では、この科目名で語られることもあります。

    利益の計算においては、売上が上がっていない、まだ完成していない工事に対応する経費は、「まだ経費じゃないよね」と考えます。(まだ作り途中であり、納品してない状態。)

    いわゆる費用収益対応の原則です。売上と連動する経費は、払っただけでは経費ではない。売上が計上されて初めて経費という考え方が、建設業では特に問われます。そのため、決算日をまたぐ(挟む)工事については、細心の注意を払って、仕掛品を正しく集計しなければ、間違った利益で決算申告することになります。

     

    仕掛品に含めるもの

    仕掛品の対象となるのが、勘定科目では、材料費、外注費、人件費(給与・法定福利費)、さらに細かく考えれば、現場での水道光熱費(電気代、水道代、燃料代など)や移動のための交通費も対象になってきます。 もちろん、勘定科目での判断だけでなく、根本は、売上との紐づきをしっかりとチェックして、集計することです。少なくとも材料費・外注費・人件費といった金額が大きくなるものは確実に抑えておきたいところです。

     

    売上は、どのタイミングで計上するのか

    仕掛品を正しく集計するためには、売上をどのタイミングで計上するか、ということも確認する必要があります。売上を計上するタイミングは、「相手に完成した物件を引き渡した日」です。この引き渡したタイミングで、ようやく仕掛品は経費になるのです。

     

    長期工事の場合だと、中間金が入金されるときがあります。そのときも、あくまでそれは前受金(売上金の先預り)であると考えます。長期工事の場合も、お金が入金されたタイミングでもなく、「引き渡した日」で売上計上することになります。

     
    仕掛品と売上の計上タイミングを確認したところで、実際に具体例で確認してみましょう。3月決算の法人が、A工事(上記のオレンジ色)を受注したとします。A工事の施工にあたり材料を仕入れ、外注先に作業を依頼します。会計仕訳で表現すると次の状態です。

     

    材料費 100万円/ 現金預金  100万円
    外注費 200万円/ 現金預金  200万円

     

    ただ、決算日のX2年3月31日時点では、A工事は完成していないので引き渡しが済んでいなかったとします。その場合には、経費にするのではなく一旦仕掛品として処理する必要があります。次の仕訳イメージです。

     

    仕掛品 100万円/ 材料費 100万円
    仕掛品 200万円/ 外注費 200万円

     

    この処理により、X2年3月31日決算時点では経費ではなく、資産(次年度の経費となる、仮払いの状態)として処理することになります。

    そして、次のX3年3月31日決算のときには、A工事は引き渡しが終わっているので、請負金額500万円の工事だったとすると、この決算でようやく売上を認識することになります。

    売掛金 500万円/ 売上高 500万円
    材料費 100万円/ 仕掛品 100万円
    外注費 200万円/ 仕掛品 200万円

     

    ↑と処理を行い、この次年度の決算で売上と対応して仕掛品も経費になるという流れになります。引渡しが済んで、ようやく差し引き200万円(500万円-200万円-100万円)の利益を認識するわけです。

     

    仕掛品は売上との対応を意識しながら、集計していくことがコツです。売上になってないものは経費として処理してはダメだということです。決算時には、通過勘定科目である仕掛品にいったん振り返ることが必要です。売上との紐づけを確認し、漏れや誤りがないようにきっちりと集計しましょう。また、仕掛品を集計するために売上との対応を社長が認識することによって、税務調査対策はもちろんのこと、納税の予測や資金繰り面、案件ごとの利益率の管理などにも効果があります。

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