経営事項審査のポイント~その1 決算書数値が審査に影響する

公共工事の入札に参加するためには、経営事項審査を実施することが必須です。建設業許可を得ていることはもちろんですが、年1回の経営事項審査を経ずに入札に参加することはできません。

この経営事項審査は、決算書数値から算出する点数のウェイトが高く、決算数字が改善すれば点数は上がります。

 

具体的には、経営事項審査の点数はP点と呼ばれます。さらにややこしいのですが、P点の内容は下記です

P(総合評定値) = 0.25 X1 + 0.15 X2 + 0.2 Y + 0.25 Z + 0.15 W

これ何を言ってるの?と感じた方も多いと思いますが、X1、X2、Y、Z、Wの5つの評価の合算がP点と呼ばれるものです。
このうち決算書数値から算出されるものがX2とYです。X2は会社の規模を評価するもので経営規模評点と呼ばれます。Yは経営状況評点と呼ばれます。

今回は、この決算書の数値で審査する2つの評点について解説したいと思います。

 

繰り返しですが、X2は会社規模を示す評点で2つの数字から判定されます。1つは自己資本額、2つ目は平均利益額です。

自己資本額は、貸借対照表の純資産の部という欄に記載されているものです。ここを増やすには増資をするか税引き後利益を増やすかしかありません。なお、原則は審査を受ける直前決算の貸借対照表の数値を用いますが、今期は赤字となり、純資産が減ってしまったというときは、さらに前の年度の数値との合計額を2で除した額(つまり2年間の平均)を用いてもOKです。

 

平均利益額は、最初から2年間の平均で計算します。この場合の「利益額」とは、営業利益+減価償却費です。イメージとしては償却前・利息支払い前・税引き前利益の2年平均です。当たり前ですが利益を増やす以外方法はありませんし、一時的な特別利益(例えば固定資産の売却とか)、営業外収益(例えば助成金をもらって利益がでたとか)で利益を出しても平均利益額にはプラスの効果はありません。ここが自己資本額の利益とは大きく違うところです。

言い換えれば、営業利益を増やすように決算書表示を意識することが重要です。雑収入という営業外収益科目が多い会社は、一度内容を確認したうえで、経常的なものは営業利益に含められないかを検討するのも良いでしょう。

 

この2つの数字をベースにX2は決まります。分かりやすくいえば、利益を出して、かつその利益を内部留保する。つまり節税的な方向に行かないことがポイントアップには求められるといえます。節税は税金を減らしますが、経費を増やすことでもあるので、当然に利益も減るからです。

次に経営状況評点のYです。少し難しくなりますし、このYを理解するのは大変です。
8つの財務指標を組み合わせて算出します。

 

図1をご覧ください。

<図1>

Y点 583点 167.3点 ×     (分析指標)
  (①×-0.465) ①純支払利息比率
(②×-0.0508) ②負債回転期間
(③×0.0264) ③総資本売上総利益率
(④×0.0277) ④売上高経常利益率
(⑤×0.0011) ⑤自己資本対固定資産比率
(⑥×0.0089) ⑥自己資本比率
(⑦×0.0818) ⑦営業キャッシュフロー
(⑧×0.0172) ⑧利益剰余金
0.1906  
     

 

図1を見ても分かりにくい!ならば、もう一段階、分かりやすくしてみました。

図2だといかがでしょうか?「点数の影響」と「単位」に着目すると、よりイメージがつきやすいと思います。

<図2>

Y点 583点     (点数への影響) (単位) (判定時期)
  (純支払利息比率×▲77.7945点) 分析指標の比率が高いほどY点がダウン % 直近決算期
(負債回転期間×▲8.49884点) 分析指標の比率が高いほどY点がダウン % 直近決算期
(総資本売上総利益率×4.41672点) 分析指標の比率が高いほどY点がアップ % 2期平均
(売上高経常利益率×4.63421点) 分析指標の比率が高いほどY点がアップ % 直近決算期
(自己資本対固定資産比率×0.18403点) 分析指標の比率が高いほどY点がアップ % 直近決算期
(自己資本比率×1.48897点) 分析指標の比率が高いほどY点がアップ % 直近決算期
(営業キャッシュフロー×13.68514点) 分析指標の金額が高いほどY点がアップ 1億円 2期平均
(利益剰余金×2.87756点) 分析指標の金額が高いほどY点がアップ 1億円 直近決算期
31.88738      
         

 

各分析指標の解説は長文になるので、別の機会に解説いたしますが、既に多くの解説がインターネット上にありますので、各分析指標の名称で検索すれば理解はしやすいと思います。実際に経営事項審査を進めるうえでは、決算書の数値情報を経営状況分析機関という国土交通省にと登録された機関(現在、10社あります)に依頼が必要になります。その機関の解説を読んでおくのも指標を理解するうえで有益です。

↓参考リンク(経営状況分析機関)

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000091.html

↓参考リンク(建設業経営情報分析センター 様のHP)

https://www.ciac.jp/keisin

RECOMMEND