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  • 遠い工事現場への長期出張時の社宅費用も給与課税されるの?

    建設業では、工事現場が遠方になることもあり、数日ではなく、現場近辺で数カ月過ごすこともやむを得ないことがあります。一時的に社宅を会社が借りて、そこに従業員を住まわせるということがあると思います。そこで気になるのが、「この社宅の家賃は全額会社負担でOK?従業員に無償(タダ)で貸しても問題ない?」ということです。今回はそんな建設業にまつわる社宅の費用について解説します。

    ※役員については別の取扱いがあります。今回は「従業員」を前提に解説いたします。

     

    そもそも社宅費用が給与課税されるとは?

    通常、従業員に社宅を無償または低額で提供した時は、税務上は従業員に対して現物で給与を支給した(=従業員から見ればその分の利益を得た)と考えます。そのため、現金で支給される場合と同様に、従業員側では所得税が課税されることになり、会社としてもこの所得税を源泉して納めなくてはいけません。

    これが「給与課税」です。課税を受けないためには、従業員から家賃の一部を負担してもらう必要があります。

    具体的には、以下の計算式で計算した賃料相当額の50%以上を、従業員に負担させることになります。

     

    賃料相当額(月額)=A+B+C

    A=その年度の家屋の固定資産税の課税標準額×2/1,000

    B=12円×その家屋の総床面積(㎡)/3.3(㎡)

    C=その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×2.2/1,000

     

    従業員が負担する金額が、上記賃料相当額の50%を超えていれば、給与課税しなくても良いということになっています。逆に超えていない場合は、従業員負担額と賃料相当額との差額が「給与」扱いになります。

     

    <ケース1>従業員負担額が賃料相当額の50%超・・・給与課税は受けない

     

    <ケース2>従業員負担額が賃料相当額の50%以下・・・賃料相当額との差額が給与課税

     

    上記の算式で計算をするためには固定資産税評価明細書が必要となり、計算も少し複雑になるため、実務上は、実際に支払う賃料の半額を天引きするケースも多いです。なお、固定資産税評価明細書は、賃借人が市区町村役場に申請することで取得は可能です。。

     

    無償で提供しても給与課税されない場合も

    一方で、全額会社が負担しても「非課税」となる場合もあります。それは、指定された場所に住まないと業務遂行が不可能だと考えられるケースです。職住一体でないと仕事が遂行できないというイメージですね。具体的には、以下のものに限られます。

     

    ①    船舶乗組員に対し提供する船室

    ②    常時交代制により昼夜作業を継続する事業場において、その作業に従事するため、常時早朝又は深夜に出退勤をする人に対し、その作業に従事させる必要上提供する家屋又は部屋

    ③    通常の勤務時間外においても勤務することを常例とする看護師、守衛等その職務の遂行上勤務場所を離れて居住することが困難な人に対し、その職務に従事させる必要上提供する家屋又は部屋

    ④    次に掲げる家屋又は部屋

    イ 早朝又は深夜に勤務することを常例とするホテル、旅館、牛乳販売店等の住み込みの使用人に対し提供する部屋

    ロ 季節的労働に従事する期間、その勤務場所に住み込む使用人に対し提供する部屋

    ハ 鉱山の採掘場に勤務する使用人に対し提供する家屋

    ニ 工場寄宿舎その他の寄宿舎で事業所等の機内又はこれに隣接する場所に設置されているものの部屋

    (所得税基本通達9-9)

     

    季節的労働として短期間の間(例えば2か月程度)、日雇労働者に対して社宅を無償提供するような場合には、上記④ロに該当しますので、非課税扱いとなります。ただし、建設業で該当する可能性があるのは、②ぐらいでしょう。

     

    なお、家賃以外の社宅にまつわる費用で、全額会社負担とすることができるものもあります。下記に整理してみました。

     

    給与課税されないもの 給与課税されるもの

    ・業務都合による転居先への移動費用等で通常の範囲内の金額のもの(引っ越し費用含む)※

    ・会社契約の仲介手数料、敷金、礼金

     

    従業員自身で賃貸借契約をした場合の

    ・借家権利金

    ・仲介手数料

    ・水道光熱費、駐車場代

    ※実費相当額程度。これを超えた部分については、給与課税されます。

     

    天引きすると、社員の手取りが減ってしまう

    社宅費用を給与天引きすると、当然手取りは減ることになります。従業員にとっては会社の都合で転居することになったのに、結果手取りが減るのであれば不満に感じることでしょう。

     

    その場合には、赴任手当・転勤手当等の手当を支給することで解消することが多いです額面金額を増やすことで、給与課税された分を補填し、実際の手取り額を減らすことなく支給することができるからです。

     

    ただし会社としては、実質費用負担が増えることになります(社会保険料も増えます)。いわゆる会社命令による転勤であっても、社宅についての課税はないという取り決めは税法にはないので注意したいところです。これについては、釈然としないところですが、家族が住む自宅はあるまま単身赴任するケースであっても、上記所得税法基本通達9-9の解釈では、交替勤務の職場でもない限りは、会社近所の社宅に住むのと、税務的には同じ扱いとなります。

     

    良かれと思って従業員にしてあげたことが不利益にならないように、あらかじめ社宅費用についての規定や、採用時の雇用条件通知書には転勤が有る旨は記しておきたいところです。

     

    転勤と、長期出張の違い

    ただし、これは転勤の場合であって、長期出張と解する場合はどうなるのだという疑問は湧きます。出張であれば現地の宿泊費も当然、非課税となり所得税も課されません。出張日当を払っても同様に課税を受けません(規程の用意と手当の額の妥当性の検証は必要です。いくらでもOKというわけではありませんのでご注意を)

     

    転勤と長期出張は何が違う?ですが、法律には定義はありません。ただ、外形的に言えることは転勤は組織としての所属場所が異なるので、直属の上司や、工事が終了した後の勤務場所は変更となります。通常は期間を限定しない、転勤辞令が発行されます。これに対して長期出張は、直属の上司が変わるわけではなく、工事終了後も戻る勤務場所は工事開始前と同じです。そして工事期間も決まっていることでしょう。

     

    問題は、税法が転勤と長期出張の取り扱いを曖昧にしている点です。ここで実務に携わる方は明記がないので不安になるわけです。

     

    ここからは、弊社の私見となりますが、出張に短期・長期の違いは税法でも明確にされていません。●日目から長期出張になるという明記はありません。

     

    そのため、あくまで出張ということであれば宿泊実費(ホテル代)を下回る居所(マンスリーマンション)の賃借費用を選ぶことは、会社として経済合理性のある行為(同じ効果ならコストの低い方を選択する)なので、全額を会社の単純経費として、工事現場に長期出張する社員からは一切天引きしなくとも、税務上の問題は起きにくいと思われます。現場への往復旅費を考えれば、その経済合理性は尚更です。

     

    一定の出張日当を支払うことで、実質的に現地での食事代・洗濯代等の日常生活費補填を行うことも可能でしょう。ただし、あくまで出張ですので、賃借した居所は誰でも使用できる前提(理屈上、他の社員が使用するのもOKであるはず)は必要です。出張地であり住居地ではないからであり、これは転勤との大きな違いになると思います。宿泊実費よりも賃借料の方が安いという見積試算書も社内で用意しておくと税務調査において、経済合理性を裏付ける説得力が保てます。

     

    また、税務的に問題となることを絶対に避けたいのであれば、出張手当×出張日数>税務上、天引きが求められる社宅費用 であれば、社員の持ち出しは起きないので、このロジックで考えるのも一つでしょう。大事なことは長期出張で現場に張り付く社員の手取りが減らず、問題が起きにくい運用を考えることです。この場合、出張手当のルールである出張旅費規程の整備が重要になります。

    もしくは、現実的に選択する会社はないでしょうが、出張手当×出張日数 を支払って、住居は社員に自由に個人契約してもらうというのも一つです。

     

    なお、この給与課税の問題は、社員本人への課税ではあるのですが、実際の税務調査では、源泉徴収義務者である会社へ支払いが求められます。税務署が本人に直接通知や支払いを求めることはありません。

     

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