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人件費が増える建設会社の節税
2019.11.27
愛知県の建設業界の人手不足感を数値でチェック
愛知労働局が公表している「最近の雇用情勢」という資料があります。業種や年齢別の求職環境を知ることができます。令和元年9月での愛知県内の建設業の有効求人倍率は8.32です。有効求人倍率は、有効求職者数に対する有効求人数の割合です。イメージとしては、人を募集している会社が8社あっても、その8社に1人しか応募がないということになります。
ちなみに、愛知県の全産業での有効求人倍率は1.71です。他業種の5倍近い人手不足だと考えても良いでしょう。このような雇用環境のなかで新規求人はもちろんですが、既存の社員さんの雇用維持も重要です。相応の処遇(給与水準の向上、休みの確保等)は必須となります。
給与水準を上げた会社は、建設業では殊更に多いことは容易に推測できます。月給を上げるのは躊躇う会社でも賞与のウェイトを増やして年収ベースでの底上げに取り組む顧問先も増えてきた感はあります。
既存社員の年収をアップしている建設会社は、所得拡大促進税制を検討
実は既存社員の年収を増やしている会社は、所得拡大促進税制という優遇税制を使うことができます。ちなみに年収をアップしたうえで、この税制を使うことを自主的に選択しないと適用はありません。申告期限までに別表六(二十六)という書類を記載し、申告書に添付する必要があります。添付を忘れると適用はできませんし、申告期限を過ぎると適用は一切できないので、今年は昇給やボーナスのアップをしたな~という社長は、この税制の適用をぜひ検討してほしいです。
この税制での法人税の節税額は、ざっくり言えば、(今年度の給与・賞与-前年度の給与・賞与)×15%です。今年の決算での全社員への給与・賞与の合計額が3000万円、前年決算では2,500万円であれば、増えた500万円に15%を乗じた75万円が法人税の節税額となります。
さらに、法人税をベースに課税される法人市民税・県民税も連動して安くなります。給与そのものを増額はもちろんですが、固定費である月給は増やしにくいいけど、業績が良ければボーナスで積極的に還元する場合でもOKです。要は、トータルでの年収を増やせば良いわけです。
年収を増やすというのは、具体的には次の要件をすべてクリアすることになります。
①継続雇用者(通常は2年間ずっと在籍している雇用保険被保険者)の給与等支給額が前年度比で1.5%以上増加した場合。
②継続雇用者以外の人も含めた、給与等支給額が前年より増えていること
この税制は、従業員の所得を増やす会社への優遇税制ですので、在籍している社員が1年前より年収が増えているかを問います。前年度の期首から当年度の期末まで2年間ずっと在籍している人の年収が全体で増えているかをチェックするわけです。それが①になります。一人年収が減っていても、2年間在籍している社員全体で、1.5%以上年収が増えていれば適用できます。
なお、年収はあくまで会社の事業年度(3月31日決算の法人であれば、4月1日~3月31日までの期間)で集計します。源泉徴収票に記載された年収とは異なりますので、ご注意ください。給与を払っていても雇用保険被保険者でない期間はカウントされないので注意してください。適切な保険加入が問われます。また、役員や同族関係者への給与は対象から外されます。役員でない親族への給与は、この税制の適用においてはカウントされません。親族の給与をいくら増やしても、この税制は残念ながら適用されません。この税制を適用するうえで、一番重要なのが継続雇用者への給与・賞与の正しい集計となります。2年間の途中で入退社のあった方は、当然カウントしません。人数が多い会社では、この集計がもっとも面倒なのも本音ではありますが、給与・雇用保険加入状況の両方を把握できる担当者や社会保険労務士の協力を得て、頑張って社員の年収を増やした分の節税は実現してほしいところです。prev.建設業の売上・原価は工事完成基準で認識する
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