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建売住宅を販売する建築会社で気をつけたい税務調査のポイント
2019.11.14
土地購入時の費用は、経費とならない?
いわゆる建売住宅(土地を仕入れて、建築後に土地と一緒に家屋を売却)を販売する会社は、建築する前に土地を仕入れることになります。販売用の土地ですね。
最近ですと、売り建て(土地だけを仕入れて、家屋建築の申し込みを前提に売却)という言葉もあります。どちらも土地の先行取得ありきです。
このとき、土地そのもの以外にも付随する費用がいくつかあります。ただし、費用と言っても税務では支払っただけでは費用(損金)として処理できないものがあります。具体的には次のとおりです。
内容 支払い時に損金になる・ならない 土地そのもの 損金にならない 仲介手数料 損金にならない 登記費用(登録免許税、司法書士費用) 損金にしてもよい 固定資産税相当額 損金にならない 不動産取得税 損金にしてもよい 土地を買った年度でその土地が売れてしまえば、もちろん全て費用処理できます。
例えば、土地を仕入れるのに、下記のコストがかかったとします。
内容 金額 土地そのもの 1,500万円 仲介手数料 450万円 登記費用(登録免許税、司法書士費用) 100万円 固定資産税相当額 20万円 不動産取得税 50万円 合計 2,120万円 この土地購入費用2,120万円にたいして、売値が2,500万円であれば
利益は差し引き380万円。売った時点であれば、合計額2,120万円をそのまま費用処理して、もちろんOKとなります。
ただし、その年度内でまだ売れてない(引き渡していない)土地は、いわゆる商品在庫と
同じです。売れるまでは費用にできません(売れるまでは貸借対照表に表示されます)
買っただけでは費用として認めない。売上があって初めて費用が認められるという考え方を税法や会計ルールは求めています。そのため、売れる前に費用処理すると税務調査で指摘を受け、追徴課税を払うことになってしまいます。
ただし、登記費用と不動産取得税は売れる前でも費用処理しても構いません。正確には払ったときに費用処理しても良いし、売れたときに費用処理してもどちらでも認められます。下記の取り扱いがあるからです。
〇法人税法基本通達5-1-1の2(棚卸資産の取得価額に算入しないことができる費用)
次に掲げるような費用の額は、たとえ棚卸資産の取得又は保有に関連して支出するものであっても、その取得価額に算入しない(注:費用にしてOKということ)ことができる。
(1) 不動産取得税の額
(2) 地価税の額 <現在、課税は停止中>
(3) 固定資産税及び都市計画税の額
(4) 特別土地保有税の額 <現在、課税は停止中>
(5) 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用の額
(6) 借入金の利子の額
先の例ですと、登記費用150万円と不動産取得税50万円の合計200万円は払った時点で費用処理できます。
イメージとしては、国や市町村などの公共団体に払うものは費用処理しても許すよ、という感じですね。借入利子については運転資金と取得資金の見分けがつきにくい(紐づけしにくい)なか、毎月支払っている経常コストとして費用処理を認めています。
間違えやすい、固定資産税相当額の取り扱い
疑問に感じられる方がいるかもしれないのが、「固定資産税相当額」です。法人税法基本通達に固定資差税も費用処理して構わないものと表記されているじゃないか?という突っ込みがきそうですが、固定資産税と固定資産税相当額はまったく違うものです。固定資産税は、1月1日時点の所有者に対して市区町村が賦課決定する税金ですが、固定資産税相当額は税金そのものではありません。
〇固定資産税相当額
・・・不動産売買の商習慣で、売り手と買い手が固定資産税の負担を按分しているもの(買い手が市区町村に払うわけではない。納税義務はあくまで売り手にある。)。単なる商習慣で日割り按分させているだけで、法定のものではない。
ポイントは、国や市区町村に払うものではないから、土地本体の売買代金の一部として考えるということになります。
税務調査においては、まだ売れていない土地と、その関連費用が費用処理されていないかは必ず問われます。建売住宅を販売する建設会社は気をつけましょう。
あくまで売れる(引渡しがあった日。履歴事項証明書の登記日付や鍵の引き渡し日などで確認)までは、基本通達に列挙されている支払いしか費用処理できないので、経理担当者は気をつけたいところです。特に仲介手数料は金額も大きいのに払ったときの費用処理は認められないので注意しましょう。税務調査でも確実にチェックされる論点です。
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