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建設業の経営力強化税制
2019.12.15
経営力強化税制は、建設業で使える節税か?
経営力強化税制は、令和3年3月31日までに新品の設備投資(機械装置、工具、器具及び備品、建物附属設備、ソフトウェアが対象)をした建設業で適用できる税制です。
具体的には、設備投資した金額の全額を即時に経費処理できます。いわゆる即時償却と呼ばれるものです。1000万円の重機を購入すれば、1000万円経費にすぐ落とすことができます。
先端設備等導入計画における償却資産税の節税と似ている税制ですが、適用要件が微妙に異なります。基本的には、両方の適用が可能となることが通例ですが、申請のタイミングを外すと適用できなくなるので、漏れのない節税を考えるときは注意が必要です。
先ず、両税制の違いを確認しましょう。
節税の名称 節税内容 申請先 提出する計画 購入後の申請 必要類型 対象資産にソフトウェアを含むか 生産性向上特別措置法による支援(先端設備等導入計画) 固定資産税の3年間減免 市区町村役場 先端設備等導入計画 不可 A類型のみ(工業会等の証明書必須 含まない 経営力強化税制 購入価格が全額経費OKまたは法人税から購入価格の10%を減額(※) 経済産業局 経営力向上計画 可 A類型・B類型 含む (※)資本金の額又は出資金の額が3,000万円を超える法人は7%。
機械装置などを購入後でも、計画申請ができる・できないの違いはもっとも大きいポイントです。計画の申請先も異なれば、申請期限も異なるわけです。適用パターンとしては下記の3つとなります。
適用パターン 先端設備等導入計画 経営力強化税制 ① 適用あり ② 適用あり 適用なし ③ 適用なし 適用あり ソフトウェア以外の設備投資では①を選択したいところですが、各計画の申請期限や認定が決算日までに間に合わない等の書類申請の管理ミスでやむなく片方の節税しかできないケースもあります。書類作成・提出のスケジュール管理が意外と重要な節税プランです。ちなみに、ソフトウェアは固定資産税の対象資産ではないため、先端設備等導入計画はそもそも不要なわけです。
経営力強化税制は、設備取得から60日以内に計画を申請することが認められていますが、先端設備等導入計画は購入後の申請は一切認められていないので要注意です。この税制は適用設備が似ているため、同じようなものだろうと高を括って申請も同時で良いと勘違いするケースが見受けられます。また、経営力強化税制は決算日までに認定を受けないと適用できません。
計画申請から認定までは30日ほど要するので、遅くとも決算日1か月前には計画申請をしておくことを推奨します。
経営力強化税制には、B類型がある(証明書不要)
経営力強化税制には「B類型」というものがあります。A類型は設備購入の際に工業会等の証明書が発行されるものです。B類型は証明書が発行されないが、導入する会社で年平均の投資利益率が5%以上向上すると判断した設備(収益力向上設備)について、経済産業局に設備取得より前に別途、計画申請を行い、確認書を取得する必要があります。投資利益率が5%以上かどうかは、下記により判定します。
「営業利益+減価償却費」の増加額÷設備投資額 ≧ 5%つまり、B類型は2回の計画申請が必要になりますし、設備投資により会社の利益が改善するという事業計画が必要となります。なお、公認会計士又は税理士から事前確認(事前確認書(様式2)」を発行してもらうことも要件になっています。計画に問題がない旨の証明をもらうというイメージです。顧問会計事務所に設備導入前に相談をしておくこととスムーズでしょう。
即時償却ではなく、税額控除も選択可能だが
中小企業の節税実務的にはあまり選択されませんが、即時償却ではなく税額控除という選択もできます。法人税から設備投資額×10%を差し引く制度です。即時償却しない代わりに、その設備の耐用年数で通常の減価償却をしていきます。
即時償却は、あくまで「経費にするタイミングを早める」ものです。減価償却費の先取りであり、設備の耐用年数を通してみれば、減価償却費の枠自体が増えるわけではありません。そのため、長期的な視点で節税を考えると税額控除を選ぶというのが合理的な考え(税額控除+減価償却費)なのですが、実際には、数年先の業績が読みにくいことから、短期的な節税効果を優先して即時償却を選択することが多いでしょう。
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