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建設業の適正利益率を考える
2020.02.09
建設業の利益率を考えても無意味?
「建設業の利益率って、どれぐらいに設定すれば良いの?」この質問をよくいただきますが、先ず利益の定義が重要です。
→税引き後の利益を基準にしているのか?
→税引き前利益を前提にしているのか?
→経常利益を前提としているのか?
→営業利益を前提としているのか?
→売上総利益率を前提としているのか?
特に中小企業においては役員報酬の設定次第で、税引き前の利益は大きく変動しますし、節税を意識して意図的に経費を使うことも想定されます。そのため、経常利益率(経常利益÷売上高。)の適正割合を先に考えるのは無意味とは言えませんが、必然性が乏しいといえます。規模の小さい建設業においては、先ずは、適正な利益を取れているかが重要なため、指標として判断する利益率として適正なものは「限界利益率」だと、私たちは考えています。
建設業の限界利益率の適正値は?
限界利益率 = 限界利益(売上-材料仕入-外注費) ÷ 売上高正しくは、限界利益 イコール (売上高―変動費)÷売上高 と定義されます。変動費は文字通り、売上が増減すれば、それに連動して増減する費用です。給与や家賃のような固定で毎月払う経費は、売上がゼロでも支出は変わらないため変動費となりません。いわゆる固定費と呼ばれる経費です。
固定費に対して、変動費は売上がゼロであれば、通常はゼロとなる経費です。建設業の場合は、材料仕入と外注費がメインとなります。細かくいえば売上が増えれば残業代が増えるなど、固定費のなかにも変動費要素のものはありますが、建設業の経営判断をするうえでは、先ずは限界利益は売上から材料仕入と外注費を差し引いたものだという理解で充分でしょう。
限界利益率が低い イコール 1件あたりの儲けが少ないということになります。薄利多売で稼ぐことになるので、工事件数を増やすことになり疲弊します。限界利益率が高い会社 イコール 儲かりやすい会社といえます。
もちろん、全部内製化して外注を使わない会社で、かつ材料仕入がないく、請負先から人工代のみをいただく会社もあります。変動費がほぼゼロの会社です。そういう会社は限界利益率が100%となります。一口に建設業といっても多岐にわたるので、建設業ならこの限界利益率ですと言い切るのは少し荒っぽくなりますが、多くの建設業の会計を見ているなかでの経験則として、外注をそれなりに使う会社では35%~40%の限界利益率はないと経営は厳しいと判断しています。50%以上あると理想的ですが、現実には元請工事でない限りは厳しいでしょう。
建設職種ごとの限界利益率を検証するには?
TKC VASTという中小企業の財務指標の統計を出しているサイトがあります。このなかに各種建設業の限界利益率が表示されています。著作権の問題があるので引用はしませんが、実際の決算書に基づくデータベースとしては、非常に価値があるサイトです。
ざっくりと建設業というのではなく、31職種に細分化して詳細を記載しているところも優れものです。統計データの収集時期にもよりますが、31職種平均で45%前後のようです。
限界利益率が低いと、前述したとおり件数で稼ぐことになり疲弊しますし、経営者の取り分である役員報酬も思うように設定できず、低い水準で留まることになります。固定費を上げることが難しく、昨今の建設業における人件費高騰のなかでは勝ち残ることが難しくなります。
適正な限界利益率を意識して、発注先との単価を見直す・交渉することが重要になります。資金繰りのよくない建設業は、たいてい限界利益率が低い傾向があります。他の指標や細かい経費にこだわるよりも優先して限界利益率に問題がないかをチェックしましょう。そのうえで他の数値も分かるようになっていくと良いでしょう。
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