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工事現場出張時の昼食代の課税4パターン
2020.02.16
「工事現場での従業員の昼食代を、会社で負担してあげたい。」このような食事代の補填をしてあげたいという、ご相談を受けることがあります。従業員の処遇を良いものにしたいという経営者の思いも感じられ、それは良いですね!と盛り上がりたいところですが、税務署としては従業員が得をすることには目を光らせます。
昼食代を会社が面倒みるパターンには、下記4つがあります。
①食事手当として月給にオンする
例えば、1日あたり500円とか月額5,000円とかの決まった額を食事手当として給与で払うものです。これは、所得税の課税対象となり、給与から天引きする所得税計算をするときに、食事手当も普通の給与と同じように扱うことになります。
給与明細に記載するものは、通勤手当を除き、すべて所得税の課税を受けます。これは、食事手当として支給していても、仮に食事をとらなければ、現金をそのまま受け取って自由に使えるのと同じであるため、普通の給与と同様に従業員が自由に資金使途を決められる性質のものだからです。
さらに、社会保険料の金額を決定する際の標準報酬月額の算定においても、食事手当を含めて算定するため、社会保険料も増えることになります。
デメリットばかりにも見えますが、税務調査での問題はないので管理が煩わしくないことと、表面年収も増えるため求人媒体で給与水準を示すときは有利です。従業員も金銭でもらえるものについては満足度も高くなるでしょう。
②昼食代のレシートをもらって実費精算する
実費精算のため、①と異なり所得税の対象にならないと思われがちですが、所得税法の扱いは昼食代については建設現場だからといった業界に限定した特例は設けられていません。残業や宿日直(夜勤等)のときの食事代には課税しなくても良いのですが、昼食代の補填は実費であっても課税されます。
(食事の評価)
36-38 使用者が役員又は使用人に対し支給する食事については、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に掲げる金額により評価(課税ということです)する。(1) 使用者が調理して支給する食事 その食事の材料等に要する直接費の額に相当する金額
(2) 使用者が購入して支給する食事 その食事の購入価額に相当する金額
(課税しない経済的利益……残業又は宿日直をした者に支給する食事)
36-24 使用者が、残業又は宿直若しくは日直をした者(その者の通常の勤務時間外における勤務としてこれらの勤務を行った者に限る。)に対し、これらの勤務をすることにより支給する食事については、課税しなくて差し支えない。残業または休日出勤といった、通常の勤務時間外(イメージとしては割増賃金が生ずる時間帯)を超えてまで仕事をしてくれた従業員に食事させる分までは課税しないということになります。そのため昼食代は、実費であっても課税を受けるのが原則です。
なお、従業員が半額以上を自腹で負担し、かつ会社が面倒をみる額(実質支払額)が月3500円以内のときは所得税の課税は受けなくとも良いことになっています。この3,500円は消費税抜きの額で判定します。とはいえ、現場の昼休憩時間に毎回同じものを食べるわけでもないでしょうから、管理が煩わしいとは思われます。
(食事の支給による経済的利益はないものとする場合)
36-38の2 使用者が役員又は使用人に対し支給した食事(36-24の食事を除く。)につき当該役員又は使用人から実際に徴収している対価の額が、36-38により評価した当該食事の価額の50%相当額以上である場合には、当該役員又は使用人が食事の支給により受ける経済的利益はないものとする。ただし、当該食事の価額からその実際に徴収している対価の額を控除した残額が月額3,500円を超えるときは、この限りでない。昼食の額が毎食事同じのケースであれば、この方式もアリだと思います。一食〇〇円と決まっている、外部の弁当業者へ会社が従業員の分をまとめて注文するようなケースでは見受けられるケースです。
③遠い現場の場合は、出張手当として支給
遠くの現場の場合は、出張手当(日当)として現金支給しても課税を受けない処理が可能です。ただし、②のような「いくらまでならOk」との明記が所得税にもありません。常識的なルールで常識的な金額でとしか判断できません。
そのため、出張手当のルール(いわゆる出張旅費規程)と、妥当な額を会社で決める必要があります。
常識的には、出張イコール相当の距離の移動を伴うと考えるべきで、すべての現場に行くときに一律日当をつけるというのはNGです。①と同じ課税を受けることになります。安易に現場への日当は非課税と思い込んでいるケースも見受けられますが、それは誤った認識ですのでご注意ください。
出張手当は一定の距離以上の移動があるときに支給すると定めているのが通常で、どれぐらいの距離であれば良いのか、という明文はありませんが、中小企業向けの統計書籍などを見ていると100キロ以上を基準としている会社が大半のようです。または移動にかかる時間が相当あり、帰社する時刻がかなり遅くなるケースや現場への移動時間が相当かかるケースが考えられます。
イメージとしては普段の仕事よりも時間がかかり、他の社員と同じような時間に帰社できない。直帰しても帰りが遅くなるが、移動時間は直接の仕事をしているわけではないし、帰る時間に仕事をさせるわけでもないので通常の給与は払えない。
だけど、何らかの補填がないと出張する従業員が一方的につらくなってしまうので、そのバランスを取るために支給するのが出張手当と考えるべきでしょう。
④打合せ時の食事
現場での打ち合わせを兼ねての食事代は、課税を受けません。これは打合せが「業務の進捗に必要で、そこに食事が介在した」場合です。分かりやすくいえば、現場が忙しい中で昼食時しか打合せができなかったケースです。
このような食事は実費であることを前提に課税はされません。とはいえ、毎回昼食時の打合せが必要かといえば疑問も生じますし、打合せであるならば誰と、何の打合せであるかの帳簿への記載も求められます。
最終的には、課税を受けるとは言え、管理が煩わしくなく、素直に従業員が喜ぶ①が意外と良いかもしれません。課税を受けていることについて文句をいう従業員は現実的には少数だと思われるからです。(実務現場の感覚だと、課税を気にしているのは経営者だけで従業員はそこまで気にしてないのが通常です。)
過度に節税にとらわれず、従業員満足度が上がり、会社の管理もラクな方法を取るのが今風ではないかと考えています。
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