建設業の消費税での簡易課税区分

簡易課税の基本的な考え方

 

簡易課税とは、基準期間の課税売上が5000万円以下の事業者(法人・個人事業者ともに)使うことのできる、文字通り「簡易な」消費税申告の方法です。

 

基準期間は、1年未満の事業年度が一度もなければ2年前の事業年度です。

 

個人事業者の場合は、単純に2年前の年度となります。例えば、令和元年スタート(2019年5月1日)の日で開業した場合は、令和3年の基準期間は、令和元年(1月1日―12月31日)です。開業日が年の中途でも、あくまで暦年単位で判定します。

 

簡易課税の計算方式は、ざっくりいえば、売上高×消費税率(通常は10%)×みなし仕入税率で計算します。みなし仕入税率とは、業種ごとに消費税法で決められている「売上高に対して消費税のかかる支出が●%ある」という率のことです。一口に支出といっても給料や社会保険料のような消費税がかかっていない支払いもあれば、材料仕入や外注費といった消費税のかかる支出が混在しています。

 

原則は、その支出を消費税のかかるもの・かからないものに事業者が区分して経理することが求められるのですが、年商5000万円未満の事業者は経理の負担がかかりすぎるので、区分することなく、簡易な計算方式で消費税申告をしてOkという特例があるわけです。事業規模が大きくない事業者向けの特例と考えると良いでしょう。

 

みなし仕入率は下記の6区分があり、業種によって率が異なります。率が高いほど、消費税のかかる支出が多い業種と考えられています。消費税の納税額はみなし仕入率が高いほど少なくなります。

 

みなし仕入率
第一種事業(卸売業) 90%
第二種事業(小売業) 80%
第三種事業(製造業等) 70%
第四種事業(その他の事業) 60%
第五種事業(サービス業等) 50%
第六種事業(不動産業) 40%

 

ちなみに、5000万円という金額を判定するときの売上は純額ではなく、総額です。建設業で相対取引(売上も仕入も両方ある業者との取引)をするときは、売上と仕入・外注費を互いに相殺するケースが見受けられますが、簡易課税の判定においては相殺後の純額売上を使うのでなく、相殺前の総額での売上を使うので注意しましょう。

 

建設業のみなし仕入税率

 

建設業のみなし仕入税率は●%とか、というのは実は一律ではありません。理由は一口に建設業といっても実際の内容は様々で、建設業許可における類型だけでも29種類あります。

 

建設業は、基本的には製造業と同じ第3種事業の区分に入ると規定されているのですが、近年では、いわゆる人工代・手間賃と呼ばれるような人手によるサービスが主で、仕入がほとんどない職種も建設業のカテゴリに入っています。例えば解体工事や機械器具の設置工事などはその最たるものでしょう。

 

消費税法基本通達では、このような人工代・手間賃が主となる建設業のみなし仕入率について、下記の説明をしています。

 

製造業等(建設業も含みます)に該当する事業であっても、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業は、第四種事業に該当するのであるから留意する。

 

そのため、解体工事業やとび工事業のように仕入がない業種は第4種となります。

塗装工事や左官工事も、塗料やしっくい等の資材を自社で仕入れる場合は第3種ですが、元請から材料が支給される場合(無償支給)は、手間賃だけになるので第4種となります。このみなし仕入率の業種区分を取り違えると納税額に大きく影響します。

 

例えば、年商3千万円の解体工事業で第4種を適用するところを建設業は基本は第3種だからといって誤って適用してしまうと、みなし仕入率は10%違うことになります。3000万円×(70%-60%)×消費税率10%=30万円の納税漏れが起きることになります。

 

30万円というとインパクトが小さいかもしれませんが、税務調査では通常3年程度遡ってチェックされます。そうすると30万円×3年=90万円にもなりますし、過少申告加算税や延滞税という罰金も含めると100万円を軽く超えるでしょう(ちなみに、法的には5年遡れます)。

 

規模の小さい建設業での100万円は、資金繰りに大きく影響します。みなし仕入率の誤りには注意したいところです。

 

簡易課税の届け出は遅くとも決算日までに提出

 

簡易課税は、あくまで特例です。特例を適用するには税務署に届出書(簡易課税制度選択届出書)を提出する必要があります。

 

提出日には期限が設けられており、1日過ぎるだけでもアウトです。適用できなくなります。届出期限は法人であれば前決算の末日まで。個人事業者の場合は前年12月31日までとされています。

 

つまり、現在の年度が開始する前に提出しないとNGなわけです。来年度は簡易課税を適用しますと届け出ることはできますが、当年度で簡易課税を適用しますというのはできません。

 

ただし、令和元年10月1日から令和2年9月30日までの日の属する課税期間については経過措置があります。簡易課税制度の適用を受けようとする課税期間の末日までに届出書を提出すれば、届出書を提出した年度から簡易課税制度の適用が受けられます。

 

法人であれば、その事業年度の決算日までに提出。個人事業者であればその年の12月31日までに提出すれば、簡易課税の適用を受けることができるわけです。

 

年末年始は税務署が休みだから、届け出は正月休みが開けてからはNG

 

税務上の特例を受けるための届出期限は、その期限が土日祝日の場合は、そのあとの最初の平日中であれば問題ありません。ただし、この簡易課税制度選択届出書を始めとする消費税の届出には、期限が土日祝日に該当する場合でも特別な運用はありません。決算日がたまたま日曜日だったとしても月曜日に届出を出す場合は適用が認められません。

 

個人事業者であれば、決算日は常に12月31日です。届出期限も12月31日となります。正月が開けてから1月4日に提出すれば良いのではないか・・・という思い込みは絶対にしてはいけません。

(参考)消費税の各種届出書とその期限

 

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