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一般建設業と特定建設業の違い(財産的基礎)
2019.11.29
一般建設業と特定建設業で求められる財務体質の違い
建設業許可を受けるうえで、「財産的基礎」という言葉があります。
ある程度の規模の工事を請けて、その工事を下請けに出すような場合、元請に資金体力がないと、下請け会社は仕事をしても代金がもらえないこともあり、元請の財務内容によっては連鎖倒産ということも起こりえます。
そのようなことが起きないように、元請会社が下請けに4000万円以上の契約をして外注する場合には特定建設業の許可が必要となります。下請け先の保護的な側面があるわけです。
一般建設業 特定建設業 ①現預金500万円以上 ③欠損の額≦資本金額×20% または かつ ②純資産500万円以上 ④資本金2000万円以上 - かつ ⑤自己資本が4000万円以上 かつ ⑥流動比率が75%以上 両者の許可基準の違いには、かなり開きがあります。4000万円以上の金額(建築一式工事では6000万円以上)で下請けに発注できる元請建設会社には、相応の高いハードルが要求されているわけです。ちなみに欠損金額とは、前決算までの利益の累積額です。この累積額がマイナスとなる場合にマイナス額を欠損の額と呼びます。分かりやすく言えば、過去の利益がまったくない危険な状態ではあるが、会社の元手である資本金の2割内の赤字累計までは許されるということになります。
自己資本は、この利益の累積額と資本金などを合算したもので、会社の当初の元手資金+累積利益+途中の追加資本金(増資)と考えるとイメージしやすいでしょう。正確には、前決算における貸借対照表の純資産の部の金額となります。
流動比率も貸借対照表の記載額がベースとなります。流動資産÷流動負債で計算した比率が75%以上ないとアウトになります。ただ、流動比率が100%を割っている状態は、一般的には資金繰りに問題が起きている状態ともいえ、75%というのはかなり低い水準ではあります。
貸借対照表を意識した経営が建設業には求められる
上記の③④⑤⑥は、いずれも許可申請前の決算で作成した貸借対照表に記載された数字で判断します。決算数字を税務署への申告後に修正するということは、申告期限後は通常できません。税務署への申告は、確定した決算を基に株主総会で承認済みのものという前提だからです。
つまり、一度確定した決算(貸借対照表)を変更することはできないわけです。特定建設業の許可を受ける前の決算書の内容をチェックしておかないと、許可が受けられないことになります。1年後の次の決算を待つか、決算日(事業年度)を変更して、新たな決算書を急慮作るかのいずれかしかありません。許可を得るために決算日を変更すること自体は、コストがかからないので、どうしても許可が急ぎで必要なケースでは、この方法を取ることを推奨します。登記費用などのコストも必要なく、会社内の定款の記載内容を変更(臨時株主総会議事録は必要です)し、税務署等への届け出のみで変更することができます。
とはいえ、毎決算時には③④⑤⑥を満たせるように、日ごろの試算表の段階から財務数値に目を配らせるべきでしょう。また、決算申告手続きを税理士事務所が行う場合は、③④⑤⑥の要件を必ず伝え、クリアできる決算書作りを常にアピールしておきましょう。節税を最優先すると純資産が減る(純資産は利益の累積額を含むからです)ので、許可を最優先する場合は、過度な節税に行き過ぎないようにしたいところです。
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