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建設業許可と、消費税節税のための法人成り
消費税率8%→10%のタイミングで法人成り
令和1年分(令和2年3月16日申告期限)の確定申告では、消費税率10%の期間は令和1年10月―12月の3か月のみです。
そのため、税率が上がっているとはいえ、8%対象の期間がメインの申告となるため、確定申告で税金が大きく増えたという印象を持つ個人事業者は、まだ少ないかもしれません(この記事の投稿は確定申告前のため、推測ですみません。)
しかし、令和2年分は、1年間すべて10%です。令和2年分の確定申告で増税のインパクトを感じる方が増えることは間違いないでしょう。
令和1年 令和2年 1月―9月 10月―12月 1月―12月 消費税率8% 消費税率10% 消費税率10% そのため、個人事業の建設業では法人成りの流れは加速すると思われます。法人化することで最低でも1年7ヶ月の間、消費税の免税が実現可能です。
「2年間免税と聞いたけど・・・」というご質問をいただきますが、2年間免税とならないケースが実はあるのです。個人事業で既に社員が多かったり、親族への専従者給与が既に多い場合は2年免税が受けられないことがあります。2年の免税が適用されるには、次の2要件を両方とも満たすことが必須だからです。
①2年前(基準期間)の年商が1千万円以下 である
②前年度の上半期(特定期間)の売上と給与が共に1千万円以下 である免税となるかの判定は、下記のフローチャートで進めると良いでしょう。
基準期間は第1期・第2期ともにないことになります。当然ですが、法人の第3期にならないと2年前の期間は存在しないからです。そのため、①の判定は通常クリアできます。
問題は②です。この特定期間の判定がクリアできないと第1期は免税ですが、第2期で消費税の申告が必要となります。この給与には役員報酬も含まれます。いままで個人事業のときは代表者の取り分は給与ではなかったのが、法人になると役員報酬という形でしか受け取ることができません。
そのため、社長の給与や親族への給与合計が第1期の上半期6ヶ月(特定期間)で1000万円を超えてしまうときには、第2期は消費税の申告が必要になります。
イメージとしては、上半期で1千万円の人件費を払える規模であれば、消費税を免税とする必要はない(担税力がある)と国は考えているということでしょう。消費税免税を検討する イコール 継続的に年商1千万円を遥かに超えている規模だと思われます。そして個人事業での実績はそのまま、法人でも続くのが通例です。そのため第1期は免税でも第2期は課税となるケースは充分ありえます。
ただし、第1期を7カ月以下とすると、第2期は特定期間の判定をしなくとも良いという特例が設けられています。そのため、第1期を7ヶ月+第2期は1年で合計1年7ヶ月のケースだと問題なく免税になるわけです。
法人になると社会保険加入などのデメリットはありますが、昨今の求人事情を考えると社会保険に加入せずに求人募集をしても応募自体が来ない可能性が高いこともあります。事業拡大を考えるうえでも消費税の免税による節税額で、社会保険料負担を補うと考える方も、この税率アップのタイミングで増えてきました。
建設業許可と法人成り
ただし、現在の個人事業で建設業許可を既に受けている方は気をつけてください。許可そのものは法人に自動的に引き継がれるものではありません。建設業許可においては、法人成りは①個人事業の廃業 プラス②新規設立法人が新規に許可を取る という扱いです。そのため、許可なしでは受けられない請負額での工事は許可がおりるまで受注できないということになります。
つまり、税込500万円未満の案件しか許可のおりていない期間は受注できないわけです。申請すれば即日許可となるわけではありません(許可がおりるのに30日程度はかかります)。
経営管理責任者や専任技術者の要件そのものは、すでに個人事業で許可を受けているので当然満たしているでしょうから、許可手続きそのものは預金残高500万円が準備できるのであれば、大きな問題はないのが通常です。
ちなみに設立時に資本金を500万円にしておく方が無難です。法人で建設業許可を新たに受けるにあたり、設立後に預金残高証明書を銀行から発行してもらうことでも事足りますが、設立登記が済んだら即日、法人の預金口座が開設できるわけではないないので、少しでも無許可の期間を短くしたいのであれば資本金を500万円にしておくことを推奨します。
法務局の登記処理に拠りますが、設立申請から1週間~10日は登記完了に必要だと考えておきましょう。ざっくりですが、設立登記申請後10日は経過しないと、許可申請は現実的に難しいでしょう。
いずれにしても安易に免税だけを考える前に、設立後すぐに許可が必要な工事を受注する可能性がないかは最低限検討しましょう。
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