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  • 経営事項審査のポイント~その2 Y点算出の指標と改善しやすい指標

    2021.09.17

     

    公共工事の入札に参加するためには、建設業許可を得ていることはもとより、経営事項審査を実施することが必須です。年1回の経営事項審査を経ずに入札に参加することはできません。

    この経営事項審査は点数で会社を評価します。そしてその結果は公表されます。一般財団法人建設業情報管理センター(CIIC)のHPで知ることができます。
    http://www7.ciic.or.jp/cHVibGljX3N

    経営事項審査の点数はP点と呼ばれます。P点の内容は下記です

    P(総合評定値) = 0.25 X1 + 0.15 X2 + 0.2 Y + 0.25 Z + 0.15 W

     

    このうち、決算書の数値から算出されるのがX2とYです。X1、Z、Wの解説は、今回は割愛しますが、X2は2つの数字から判定されます。1つは自己資本額、2つ目は平均利益額です。

    自己資本額は、貸借対照表の純資産の部という欄に記載されているものです。直前決算の貸借対照表の数値を用いて計算しますが、今さらに前の年度の数値との合計額を2で除した額(つまり2年間の平均)を用いてもOKです。

    平均利益額は、直前2年間の平均で計算します。この場合の「利益額」とは、営業利益+減価償却費です。税引き後利益ではなく営業利益を使用します。

     

    次に経営状況評点のYです。Yは次の8つの財務指標を組み合わせで算出します。

    何を判断している? 経営指標 算式 算出基準 表示 備考
    負債抵抗力 純支払利息比率 (支払利息-受取利息配当金)÷売上高 直前期 小さいほど良い評価
    負債回転期間 (流動負債+固定負債)÷(売上高÷12ヶ月) 直前期 ヶ月 小さいほど良い評価
    収益性・効率性 純資本売上総利益率 売上総利益÷2期平均の総資本(※) 直前期 % 大きいほど良い評価
    売上高経常利益率 経常利益÷売上高 直前期 大きいほど良い評価
    健全性 自己資本対固定資産比率 自己資本÷固定資産 直前期 大きいほど良い評価
    自己資本比率 自己資本÷総資本 直前期 大きいほど良い評価
    絶対的力量 営業キャッシュフロー (経常利益+価償却実施額±引当金増減額-法人税住民税及び事業税±売掛債権増減額±仕入債務増減額±棚卸資産増減額±受入金増減額)÷1億円 直前2期平均 絶対額 大きいほど良い評価
    利益剰余金 利益剰余金÷1億円 直前期 絶対額 大きいほど良い評価

    ※2期平均の総資本の金額が3千万円未満のときは、3千万円として計算

     

    ここでX2とYを見て気づくのは、「現預金」残高は指標にまったく関係がないことです。

    はっきり言えば、現預金が1億、借金(負債)が1億の会社よりも、現預金が100万円 借金ゼロの会社の方が指標は上がりやすくなります。経営的な視点で考えれば前者の会社の方が充分な資金が確保されており、資金繰りがショートしにくいのですが、経営事項審査の観点では、潤沢な資金残高そのものよりも、借金が少なく、借金の金利も少なく、資産が多くない会社の方が好まれることになります。

     

    負債抵抗性という言葉で表現していますが、いかに負債が少なく、かつ負債があることで生ずるコスト(金利)が低ければ低いほど良い評価になります。現在の低金利の景気環境と手元資金を万一のために確保しておきたいという事業継続性を意識した考えを全否定するような指標ではありますが、経営的な視点はさておき、借入が少ないほど下記の3つの指標は改善します。

     ・純支払利息比率
     ・負債回転期間
     ・自己資本比率

     

    会社経営という視点から見れば手許資金が脆弱になるのは推奨しにくいですが、この指標を改善するという視点で考えれば、決算時に借入を一括返済しやすい短期性の借入(いわゆる当座借越。借りたいときだけ借りて、いつでも返済)で資金を調達するウェイトを高め、決算時には借入を一時返済し、決算日の翌日に再度借入をするということで指標を瞬間的に高めることは理屈としては可能です。

     

    もっとも一度この手法を実施すると、毎年、決算日に同じことを繰り返すことになります。

    一度でも止めると、上記3つの指標は悪化するからです。やはり、建設業の経営的には一定の借入残高は持ちつつも徐々に減らしていくというのが王道ではあるといえます。

     

    また、経営者親族(オーナー株主)が会社に貸している場合は、無利息であっても負債ではあるので、経営事項審査では外部からの借入のある会社だと判断されます。

     

    もし貸しているお金があるのであれば、会社から経営者親族へ返済しておくのは有効です。資金が必要なときは再度、会社へ貸付ければ良いわけです。返済してもらわなくとも構わないのであれば貸付債権の資本金転換(Debt Equity Swap DESと呼ばれることが多いです)を行うのも一つです。会社から見れば、借入が減り、さらに資本金は増えるので次の指標が改善します。

     ・負債回転期間
     ・自己資本対固定資産比率
     ・自己資本比率

     

    ただし、DESは資本金を増やすため、増資の登記は必須となります。

     

    点数を上げたいために、短期的に決算書を改善したいというニーズはありますが、無理をすると会社の経営が歪むこともあるのでほどほどに、を推奨します。とはいえ、どうすれば指標が改善するかを知っておくこと自体は有益だと思います。

     

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